第34回は、AIDMAモデルとAISASモデルについて学びました。1924年、サミュエル・ホールが、消費者の購買心理過程に着目し、AIDMAを提唱しました。
A(注意Attention)では、企業が顧客へ商品情報を提供します。I(関心Interest)では、企業が顧客欲求を満たす点を提示し、商品への関心を持ってもらいます。そして、D(欲求Desire)では、顧客が商品を買いたいと感じてもらうために、お得感を演出します。その上で、M(記録Memory)では、商品が顧客の記憶に深く刻まれます。その後、顧客は他の商品との比較検討を経て、A(購買行動Action)を起こします。テレビ・ショッピングは、AIDMA通りのマーケティング手法が使われています。
AISASは、A(注意Attention)→I(関心Interest)→S(検索Search)→A(購入行動Action)→S(共有Share)で説明されます。現在、顧客が商品への関心を持てば、ネットですぐに検索して商品情報を取得できます。そして、購入行動を起こすことも可能です。その後、顧客はその商品を購入して得た効用や満足・不満を、他のユーザーと共有し、商品を購入した方の生の声を参考にして、また購入行動に役立てることが可能となります。
1.ロジャーズのイノベーター理論
今回はイノベーター理論を学びます。米国社会学者エベレット・ロジャーズ(1931-2004)は、新しいアイデアや商品の普及に関する理論を提唱しました。これは、新しい農業技術や医療方法の普及に関する事例研究から、どのようにイノベーションが普及するのかを説明するものです。イノベーションという言葉は、様々な定義がなされています。著者はこれを新しい価値の出現と捉えています。

縦軸は普及率で横軸は時間の経過とすると、なだらかな山型の曲線を描きます。その普及は、5つの潜在的採用者で構成されます。イノベーター(2.5%)は、新しく珍しいものが好きで自分の生活様式を変えるのに積極的である反面、すぐに別の物に関心が移ります。アーリーアダプター(13.5%)は、一般大衆との価値観の乖離が小さく、イノベーションが社会全体に適合的か否かを判断する役割であるオピニオン・リーダーを担います。これらを合計すると16%(普及率16%の壁・キャズム理論)となり、これを超えるとS字カーブが急激に上昇して普及が進みます。しかし、このキャズムを超えるのは難しいと言われています。
キャズムを超えると、アーリーマジョリティ(34%)が加わり50%まで普及します。その後に新しい物に懐疑的なレイトマジョリティ(34%)が加わり84%まで普及します。そして、流行に関心が薄く保守的で伝統主義者のラガード(16%)が加わり、イノベーションが広く社会に普及するという理論です。
イノベーションでは、革新的な新しい技術・アイデア・仕組みなどによって新しい価値が作り出されます。しかし、それらは市場や顧客に受け入れられないと普及しません。つまり、個人が新しいと知覚するか否か、人間の認知や価値観、社会の文化や規範などが、イノベーションの普及に重要な影響を与えます。また、イノベーションの普及には、マスメディアや口コミ情報が非常に有効となります。
2.キャズムを超えたメルカリ
フリマアプリの代表格であるメルカリは、キャズムを超えた事例と言えるのではないでしょうか。メルカリの2024年6月期決算では、国内のアクティブ・ユーザーは約2300万人です。国内総人口を1億2000万人とすれば、普及率は19.2%となります。普及率16%の壁・キャズムを超えたことになります。
スマートフォンの普及と同時に、メルカリはアーリーアダプターの間で、手軽に不用品を売買できるアプリとして普及しました。その後、テレビCMやインフルエンサーを活用したプロモーションを大規模に展開しました。そして、簡単に出品できる、みんなが使っているというイメージを浸透させ、アーリーマジョリティへと急速に普及しました。ユーザー間の安心感を高めるためのサポート体制や、決済システムも普及を後押したと言えるでしょう。
その他の事例を含めて共通するのは、初期の利用者層からメインストリームの利用者層へと広がる際に、新しさだけでなく安心感、実用性、周囲の人が使っているという社会的証明を効果的に訴求している点です。次回は、市場調査について学びます。
以上
福嶋 幸太郎 ふくしま こうたろう

著者:福嶋幸太郎 1959年大阪市生まれ。大阪ガス(株)経理業務部長、大阪ガスファイナンス(株)社長を経て、大阪経済大学教授(現任)、経済学博士(京都大学)、趣味は家庭菜園・山歩き・温泉巡り。

