第33回は、プロダクト・ライフサイクル(PLC)について学びました。これは、製品が市場に投入される導入期・成長期・成熟期・衰退期の4段階をたどり、寿命を終え衰退するまでを体系づけて説明したマーケティング理論です。
導入期では、製品の知名度が低く売上高は小さく、製品開発や市場投入の費用負担が大きく、利益は出ずに赤字となります。成長期では、市場が拡大し製品の知名度が高まるため、売上高は急上昇して利益が出始めます。
成熟期の前半では、売上高の上昇は緩やかとなり、売上高・利益はピークを迎えます。しかし、成熟期の後半では、競合企業が増加して価格競争が激しく、利益も徐々に低下します。そして、衰退期では、市場から製品を撤退させる企業が出始めて、売上高・利益ともに低下傾向をたどります。しかし、すべての製品がPLCモデル通りに推移する訳ではなく、当初から成長が見込めないケース、一旦衰退後に成長するケースもあります。
1.AIDMAモデル

今回は、消費者行動のAIDMA(アイドマ)モデルとAISAS(アイサス)モデルを学びます。1924年、今から百年前に広告・販売の実務書を著したサミュエル・ホールが、消費者の購買行動における心理過程に着目し、AIDMAを提唱しました。当時の米国は大量生産・大量消費の時代でした。企業は消費者に適切な時期に適切な情報を提供し、消費者の購買心理を刺激して、商品を販売する方策がAIDMAです。
A(注意Attention)は、企業が顧客へ広告媒体・訪問販売・店舗を使って商品情報を提供し、顧客に商品を知ってもらうことです。I(関心Interest)は、企業が顧客へ商品の特長、顧客欲求を満たす点を提示し、商品への関心を持ってもらうことです。そして、D(欲求Desire)は、顧客が商品を買いたいと感じてもらうために、企業は顧客へ価格や支払条件など、お得感を演出することです。その上で、M(記録Memory)は、商品が顧客の記憶に深く刻まれることです。その後、顧客は他の商品との比較検討を経て、最終的に商品のA(購買行動Action)を起こします。
テレビ・ショッピングでは、AIDMA通りのマーケティング手法が使われています。一方、企業は顧客がAIDMAのどの段階で、購買を断念して離脱するのかを分析すれば、マーケティングの課題を発見でき、対策を講じることができます。
2.AISASモデル

AISASは電通が考案したと言われていて、A(注意Attention)→I(関心Interest)→S(検索Search)→A(購入Action)→S(共有Share)で説明されます。現在ネットに接続されたPC・スマホ・タブレットが普及しているので、顧客が商品への関心を持てば、これらですぐに検索して商品情報を取得することができます。そして、ネット・ショッピングによって購入行動を起こすことが可能です。
ネット・ショッピングでは、様々なネット広告を活用して顧客の注意を喚起することが可能となります。ネット広告は、ページ・ビュー数やクリック数を把握することが可能ですので、広告効果を客観的に確認することができます。その結果、より顧客に注目してもらえるキーワードや広告コンテンツを制作・編集することができます。
また、ページ・ビュー数やクリック数によって、商品やサービスごとに顧客が関心を持っている度合いも確認できます。さらに、検索サイトのSEO対策(検索エンジン最適化:Search Engine Optimization)によって、商品やサービスを検索してもらうキーワードを選択して、顧客のアクセス数を増加させることもできます。WEBページの遷移や実際の購入行動へ至る確率も把握できるので、より客観的に顧客の購入行動が分かります。
その後、顧客はその商品を購入して得た効用や満足・不満を、他のユーザーと共有することができ、他のユーザーは実際に商品を購入した方の生の声を参考にして、購入行動に役立てることが可能となります。次回は、イノベーター理論について学びます。
以上
福嶋 幸太郎 ふくしま こうたろう

著者:福嶋幸太郎 1959年大阪市生まれ。大阪ガス(株)経理業務部長、大阪ガスファイナンス(株)社長を経て、大阪経済大学教授(現任)、経済学博士(京都大学)、趣味は家庭菜園・山歩き・温泉巡り。

