第39回「サプライチェーン・マネジメント」

 第38回は、「ブランド管理」について学びました。ブランドは家畜の焼き印に由来し、識別・品質保証・感情的経験の3機能を有します。高いブランド・ロイヤリティを確立できれば、高価格帯での販売も可能となります。
 マーケティング戦略では、アンゾフのマトリックスによって、4つの戦略に区分できます。既存製品を既存市場に投入する市場浸透戦略は、最もリスクが少ない戦略となります。既存製品を新市場へ投入する市場開発戦略、新製品を既存市場へ投入する製品開発戦略は、自社の資源や経験を活用する「範囲の経済」が働き、相対的には成功の可能性が高まります。しかし、新製品を新市場へ投入する多角化戦略は、自社の資源や経験を十分活用できないため、ハイリスク・ハイリターンの選択となります。したがって、マーケティング戦略では、自社の経営資源とリスクを考慮した戦略選定が重要となります。

1. サプライチェーン・マネジメント(SCM)

 第39回は、サプライチェーン・マネジメント(SCM)について学びましょう。SCMは、企業が原材料を調達して製品を製造し、これを配送して販売し顧客サービスを実施するなど、製品やサービスが最終的に消費者に届くまでの、一連の供給過程を管理することです。そして、全体的な統制管理による運営コストの削減、納期の短縮、欠品の防止、在庫の縮小、設備の有効活用を実現し、利益を最大化させる経営手法の一つです。
 製品は、この図の左から右へ流れます。一方、カネや情報は右から左へ逆向きに流れます。SCMは、内部組織や外部組織との分業となるため、市場や消費者の動向や組織間の情報を迅速かつ効率的に把握して、活用する必要があります。

そのため、ITを駆使して組織間の情報を共有しなければなりません。また、SCMの効率を追求するため、可能な限り在庫を少なくし、早いタイミングでの発注に繋げて在庫の最適化を図ります。

2. SCMのメカニズム

(1)コンビニでのPOS活用
 コンビニでは、POS(販売時点情報管理)を活用してレジ入力と同時に、販売実績が計上され、店舗在庫が減少し、店舗側の発注情報に反映されます。そして、コンビニ本部の在庫情報に反映されて、供給側への発注管理・配送ルートにも反映されます。その結果、店舗側では過剰な在庫を持たずに運営でき、欲しい時に商品がある欠品防止を実現できます。しかし、災害や事故などのトラブルが発生した時には、サプライチェーンが中断して供給不能や遅延が生じるため、SCM全体にその影響が及びます。

(2)新型コロナによるSCM崩壊
 新型コロナウィルス蔓延時には、供給側の半導体工場が操業停止し、製品の流れが遮断されました。一方で、リモートワークやオンライン授業が普及したため、PCやタブレットなどの電子機器の需要が高まり、重要な部材である半導体が不足しました。その結果、製品供給量が低下して価格が高騰し、情報機器製品の不足が生じました。在庫を極限まで減らす効率重視のSCMが、予期せぬ事態には脆弱であるという教訓を残しました。

3. 政治経済のブロック化

 米中対立、ロシアのウクライナ侵略、米国のトランプ関税などの政治的要因は、グローバルな最適地からの調達というSCMの根幹を揺るがします。平常時には、最も安く効率的な国から調達するのがSCMの常道でした。しかし、政治的な対立によって特定の国からの輸入が制限されると、供給網を根本から作り直す必要が生じます。
 同盟国や近隣諸国だけで供給網を完結させる仕組みが進むと、効率化よりも安全保障や継続性が優先されます。従来の効率優先のSCMから、リスク分散のためにあえて予備在庫を持ったり、調達先を分散させたりする復元力重視のSCMへの転換が求められます。
 SCMは、平常時にはITによる情報共有で驚異的な効率を発揮しますが、災害や政治的混乱などの有事には、一連のつながりが弱点となり、その影響がSCM全体へ波及します。したがって、現代のSCMには、効率性と柔軟性の両立が不可欠となります。次回は、経営学の理論とビジネスについて学んで参りましょう。

福嶋 幸太郎    ふくしま こうたろう

著者:福嶋幸太郎 1959年大阪市生まれ。大阪ガス(株)経理業務部長、大阪ガスファイナンス(株)社長を経て、大阪経済大学教授(現任)、経済学博士(京都大学)、趣味は家庭菜園・山歩き・温泉巡り。

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