第39回は、「SCM(サプライチェーン・マネジメント)」について学びました。企業が原材料調達から販売までの一連の流れを管理し、在庫最適化やコスト削減を通じて利益を最大化する手法です。ITにより、製品の流れと逆向きのカネと情報の流れを共有します。しかし、効率重視のSCMの体制は有事の際に脆弱さを露呈します。
コロナ禍の半導体不足では、需給の急変に対する脆さが顕在化しました。また、米中対立や紛争といった地政学リスクにより、従来のグローバルな最適地調達は困難になっています。現在はコスト削減だけでなく、安全保障や復元力を重視し、予備在庫や調達先の分散を図るリスク管理が重要です。平常時の効率性と有事の柔軟性をいかに両立させるかが、現代のSCMの最重要課題です。
1. 経営管理と経営戦略
第1回の「マズローの欲求段階説」から本コラムを連載開始し、今回は40回目となりました。これまで、経営学の理論解説とビジネス事例を中心に連載を進めて参りました。著者は、経営学は限られた経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報をどのように調達し、どのように配分し、どのように組み合わせて、企業の利潤を最大化すれば良いのかを学ぶ学問領域であると考えています。
4つの経営資源はいずれも重要な要素ですが、企業の良し悪しを決定する最も重要な経営資源はヒトではないでしょうか。多くのヒトの集まりである企業組織は、リーダーの人格や資質だけではなく、そのマネジメント能力に依存しています。第13回「リーダーシップ」で学んだように、このマネジメント能力は学びと経験によって、鍛えることが可能です。そのため、人間にしか存在しない最高次元の自己実現の欲求を説く、心理学者マズローの欲求段階説を第1回目に配置しました。その後、企業の利害関係者、第4回「所有と経営」、第5回「経営戦略と経営管理」を概観し、経営管理を細分化して、その詳細を学びました。つまり、経営管理にはヒトに係わる人事管理や組織管理、モノに係わる生産管理、カネに係わる財務管理、データに係わる情報管理が存在します。

著者は、これら経営管理を駆使しながら、対外的営業活動をしているのがマーケティングであると考えています。第5回「経営戦略と経営管理」で採り上げた内容を示したのが、本文の図となります。
経営学発展の初期段階では、経営管理がしっかり機能していれば、企業は順調に成長すると考えられていました。しかし、企業を取り巻く外部環境の変化が速くなれば、経営管理だけでは上手く企業経営ができなくなり、どのような方針で他企業との競争に打ち勝つのかという経営戦略が必要になりました。この経営戦略には、企業全体を対象とする企業戦略、企業内の事業部を対象とする事業戦略、4つの経営資源を対象とする機能別戦略が存在します。
2. 経営学の理論とビジネス
著者は、ビジネスマン向けの経営学研修の講師も担当しています。その際、参加者から「なぜ自分が仕事でうまく行かなかったのか、研修で思い当たる所がたくさんあった」という感想をもらいました。著者は、「過去から現在まで世界中で研究されてきた経営学の理論があるので、これを学ぶ必要があるのではないか」、「経営学の理論の引き出しを多く持てば、ビジネスの課題解決に役立つ」と助言しました。
私も38年間ビジネス経験をしました。しかし、経営学の理論は机上の空論だと考えていた時期がありました。後年、著者も企業経営者を経験したことによって、研修で感想をもらった経営者と同じ反省をしました。
企業は株主の出資により誕生します。そして、経営者は十分とは言えない4つの経営資源を駆使しながら、企業の利潤を最大化する活動をします。その結果を株主に報告し、説明責任を果たすために会計が存在します。次回は、複式簿記の発祥について学びます。
福嶋 幸太郎 ふくしま こうたろう

著者:福嶋幸太郎 1959年大阪市生まれ。大阪ガス(株)経理業務部長、大阪ガスファイナンス(株)社長を経て、大阪経済大学教授(現任)、経済学博士(京都大学)、趣味は家庭菜園・山歩き・温泉巡り。
以上

