第13回「リーダーシップ」

効果的なマネジメント

 第12回は、マグレガー(06-1964)のX理論・Y理論を学びました。X理論は、元来人間は仕事が嫌いという人間観を持っています。そのため、アメとムチの組み合わせが効果的なマネジメントになります。

一方、Y理論は、元来人間は仕事が好きという人間観を持っています。そのため、目標に基づく管理が効果的なマネジメントになります。現代の大企業組織では、ドラッカーの目標管理制度(MBO:Management by Objectives and self-control)を採り入れた従業員管理が主流となっています。

企業組織を活性化させるのは従業員ですが、従業員を導くのはリーダーです。第13回はリーダーシップについて、学んで参りましょう。

リーダーシップとは

 リーダーシップとは、「集団に目標達成を促すよう影響を与える能力である」とされています。リーダーシップの代表的な理論は、次の3つだと考えられています。

1つ目の理論は、「優秀なリーダーには共通の資質があると考える資質論」です。2つ目の理論は、「リーダーの行動に注目する行動理論」です。そして、3つ目の理論は、「リーダーの置かれた経営環境や部下の資質によって、効果的なリーダーシップ・スタイルが異なるという状況適合理論」です。

資質論と行動理論

 資質論は、(1)リーダーは健康的で逞しく器用であるという肉体的資質、(2)学習・判断能力が高いという知的資質、(3)気力・堅実さ・責任感・犠牲的精神を持つという道徳的資質、(4)一般教養、(5)専門知識、(6)経験を兼ね備えた人材であるという考え方です。

 これは、第9回で取り上げたファヨール(Fayol:1841-1925)の管理過程論の中でも提唱されています。確かにこれは理想的リーダーです。しかし、このような資質を全て備えているリーダーは滅多にいないのではないでしょうか。リーダーの必要とされる、これらの資質が少ない場合には様々な問題が生じますが、そもそも人間何かしら欠点があるものです。

行動理論は、(7)仕事に対する関心の強さと(8)メンバーに対する関心の強さという、2要因に注目する理論です。言い換えれば、(7)はリーダーの仕事や課題に直結した行動の強さ、(8)はリーダーの部下に対する感情面に配慮する行動の強さです。

(7)と(8)を縦横2軸として、その関心度合の強さを9段階に区分します。2軸には9段階の強さ(1~9)が存在しますので、81の格子(グリッド)が存在します。その結果、1・1型は仕事にも人間にも無関心な放任型リーダーとなり、リーダーとしては適任とは言えません。

1・9型は仕事を犠牲にしても人間への関心が強い人情型リーダーとなり、これもリーダーには不向きです。逆に、9・1型は人間を犠牲にしても仕事への関心が強い権力型リーダーとなり、短期間では成果を挙げられる組織になるかも知れませんが、一般的には長続きしないと考えられます。

9・9型は仕事にも人間にも関心が強い理想型リーダーと言えるのですが、少数派ではないでしょうか。そして、5・5型は仕事にも人間にも、ほどほどな関心を持つ妥協型リーダーと分類できます。

2つの要因の特徴

一般的には、2要因は一方が強く、他方はやや弱いなどの特徴を示すのではないでしょうか。さて、あなたのリーダー(上司)はどのタイプでしょうか?そして、あなたはリーダーとして、どのタイプでしょうか?

 状況適合理論は、リーダーの置かれた経営環境や仕事の難易度、部下の仕事の習熟度に応じて、同一人物のリーダーでも有効なリーダーシップ・スタイルは異なるという理論です。経営環境が悪く、部下の習熟度や目標達成意欲が低い場合には、指示型で説得型リーダーシップになります。一方、経営環境が良く、部下の習熟度や目標達成意欲が高い場合には、委任型・参加型リーダーシップになります。

どのようなリーダーシップが適切かは、組織のメンバーの特性を十分把握して、その状況に応じた行動を取らないと組織はカラ回りすることになります。私自身も様々な職場を異動した経験がありますが、状況適合理論は非常に重要なリーダーシップ理論だと考えています。

次回は集団行動で生じる、特に日本人は常に気を付ける必要のあるグループ・ダイナミクスについて学んで参りましょう。

福嶋 幸太郎    ふくしま こうたろう

著者:福嶋幸太郎 1959年大阪市生まれ。大阪ガス(株)経理業務部長、大阪ガスファイナンス(株)社長を経て、大阪経済大学教授(現任)、経済学博士(京都大学)、趣味は家庭菜園・山歩き・温泉巡り。