第5回「経営戦略と経営管理」

所有と経営の分離

第4回では、企業の所有と経営の分離とは?について学びました。

企業の所有と経営を分離すれば、広範な資金調達・社会的信用・多様な事業展開を効率的に進めることが可能となり得ますが、経営者は株主の利益を重視した行動を取るため、短期的利潤を追求せざるを得なくなり、長期の経営戦略を必要とする事業に取り組みにくい特徴があります。

一方、所有と経営を一致させれば、他の株主に左右されない経営ができるので、長期の経営戦略を継続することが可能となります。しかし、経営の透明性が担保されにくいなどの欠点も存在します。

経営戦略と経営管理

企業では具体的にどのような経営戦略を作り、どのような経営管理をしているのでしょうか。経営管理では、組織内部の4つの経営資源をいかに効率的に統制管理するのかが重要です。そのため、ヒトを内部統制する人事管理、生産設備などのモノを内部統制する生産管理、運転資金や設備資金の調達や運用を内部統制する財務管理、特許・技術・営業情報などを内部統制する情報管理に役割分担し、効率的に自組織全体を経営管理します。

企業が発展するための意思決定

しかし、経営資源間に相互関係があるため、各管理部署間で方針や意見が対立することがあります。そこで、経営者は重要案件ごとに取り組むこと、やめることを判断し、前提条件を付けたり、優先順位を付けて、意思決定を下します。これを経営会議で審議し、取締役会で法的決定をします。

 経営戦略では、経営企画部門長が企業全体の経営戦略を策定します。経営者が長期的目標への道筋を示しながら、組織を外部環境にうまく適応させ、他企業との競争に勝てる状況や、競争しないで済む状況を作り出すことで、企業を発展・存続に導く経営戦略を策定します。

そして、これを実現するために、事業部門長は自らの事業戦略を、人事・生産・財務・情報の各経営管理部門長は自組織の機能別戦略を策定します。

 経営管理(内部統制)が有効に機能しなければ、企業経営はできません。しかし、外部環境の変化が激しくなると、いくらうまく経営管理をしても、外部環境に対応できなくなってきました。

外部環境への対応

そこで、1960年代にはチャンドラー(Chandler)やアンゾフ(Ansoff)の経営戦略論が登場しました。そして、1980年代に競争戦略論を体系化したポーター(Porter)は、競争要因を分析し競争上有利なポジショニングを見つけることに主眼を置く、ポジショニング・アプローチを提唱しました。

これに対し、バーニー(Barney)は、競争優位の源泉を企業の内部資源や組織能力に求める、リソース・ベースト・ビューの立場を展開しました。企業経営では、経営戦略と経営管理は車の両輪と言えます。

次回以降は、ポーター(Porter)とバーニー(Barney)の経営戦略論を学んで参ります。

福嶋   幸太郎       ふくしま こうたろう

著者:福嶋幸太郎 1959年大阪市生まれ。大阪ガス(株)経理業務部長、大阪ガスファイナンス(株)社長を経て、大阪経済大学教授(現任)、経済学博士(京都大学)、趣味は家庭菜園・山歩き・温泉巡り。